『イオン伝導性材料の設計・合成とその応用 −イオン伝導性固体,イオン性液体−』増補改訂版 2005年1月 発行 B5版 約380頁 定価 26,000円(税別・送料別) ■刊行主旨■ イオン伝導性固体の用途が拡大しています。全固体リチウム二次電池は、他の電池に比べてエネルギー密度が格段に高く、小型化も可能で、各種携帯用電子機器には欠かせぬデバイスとなっています。また、電気自動車の電源としても盛んに研究されています。 各種ガスセンサの心臓部としても、イオン伝導性固体はますます用途が拡大しています。環境保全の上から、最近は各種ガス、すなわち酸素、水素、炭酸ガス、窒素酸化物ガス、硫黄酸化物ガスなど、さらには可燃性ガスの濃度測定にも、従来の赤外線分光などの重厚な分析機器に代わって、極めて軽便で、信頼性の高い固体電解質型ガスセンサの特徴が認識され、重宝されるようになってきました。 一方、将来の発電システムとして高く嘱望されている燃料電池の分野においても、その発電効率の高さから、他のシステムに比べて、固体電解質型燃料電池に最も熱い期待が寄せられ、原子力に代わり得るものとして評価されています。 また、本書には近年急速に感心が高まっているイオン性液体を取り入れました。イオン性液体は、塩の特性を保ったまま液体になったもので、多彩な展開が期待されています。 本書は、旧版以降これまでに月刊「マテリアル・インテグレーション」に紹介されたイオン伝導性固体およびイオン性液体に関する解説を新しく加え、再編集したものです。 Contents 第1部 イオン伝導性固体 第1章 アルカリイオン伝導体 第1節 イオン伝導性固体とその応用 (新潟大学 工学部 佐藤 峰夫) 1 はじめに 2 セラミックス系リチウムイオン伝導体の例 2.1 NASICON型リチウムイオン伝導体 2.2 β-Fe2(SO4)型リチウムイオン伝導体 2.3 ペロブスカイト型リチウムイオン伝導体 2.4 チオLISICON型リチウムイオン伝導体 3 おわりに 第2節 リチウム以外のアルカリイオン導電体 (同志社大学 工学部 電子工学科 吉門 進三) 1 はじめに 2 アルカリイオン導電体 3 β−アルカリ 4 1次元イオン導電体 4.1 プリデライト 4.2 アルカリ・ガロ・チタノ・ガレート 5 おわりに 第2章 プロトン伝導体 (名古屋工業技術研究所 主任研究官 日比野 高士 ほか) 1 はじめに 2 高温型プロトン導電体 3 水和金属酸化物の中温領域におけるプロトン伝導性 第3章 多価イオン伝導体 第1節 2価カチオン伝導体 ((独)産業技術総合研究所 関西センター 野村 勝裕) 1 はじめに 2 各種2価カチオン伝導性固体 2.1 CaS(NaCl型構造)系 2.2 β-およびβ''-アルミナ置換体 2.3 NASICON型およびβ-硫酸鉄(V) 型 2.4 モンモリロナイト置換体 2.5 ホランダイト型 2.6 ジルコン型 3 2価カチオン伝導体の応用例 4 おわりに 第2節 3価,4価イオン伝導体 (大阪大学大学院工学研究科 助教授 今中 信人 ほか) 1 緒言 2 β-アルミナ,β''-アルミナ型3価イオン伝導体 3 ペロブスカイト型3価イオン伝導体 4 タングステン酸スカンジウム型3価イオン伝導体 4.1 結晶構造 4.2 3価イオン導電率 4.3 伝導種の決定 −直接的実証− 5 ナシコン(NASICON)型3価イオン伝導体 6 4価イオン伝導体 6.1 Zr2O(PO4)2 6.2 ZrNb(PO4)3 7 おわりに 第4章 酸化物イオン伝導体 (京都大学大学院工学研究 江口 浩一 ほか) 1 はじめに 2 各種酸化物イオン伝導体 2.1 ZrO2(ジルコニア)系イオン伝導体 2.2 CeO2(セリア)系イオン伝導体 2.3 LaGaO3(ランタンガレート)系イオン伝導体 2.4 Bi2O3(酸化ビスマス)系イオン伝導体 2.5 Pyrochlore(パイロクロア)型酸化物 2.6 Brownmillerite(ブラウンミラーライト)型酸化物 2.7 C型希土類酸化物 3 粒界効果 4 表面効果 5 おわりに 第5章 ハロゲン化物伝導体 第1節 フッ化物イオン伝導体 (福井大学 工学部 助教授 高島 正之 ほか) 1 はじめに 2 材料開発の指針 2.1 結晶材料 2.2 ガラス材料 3 材料各論 3.1 蛍石型フッ化物 3.2 タイソナイト型フッ化物 3.3 酸化フッ化物 3.4 フッ化物ガラス 4 フッ化物イオン伝導体の応用 4.1 フッ化物イオン選択電極 4.2 センサー 第2節 フッ化物イオン以外のハロゲン化物イオン伝導体 (愛媛大学 工学部 機能材料工学科 青野 宏通) 1 はじめに 2 塩化物イオン伝導体の種類 3 塩化物イオン伝導体の応用 4 臭化物およびヨウ化物イオン伝導体 第6章 セリウム含有固体電解質 (大阪大学大学院 工学研究科 講師 小俣 孝久 ほか) 1 はじめに 2 セリア(CeO2)系酸化物イオン伝導体 3 ペロブスカイト型プロトン(H+)伝導体 4 新しい固体電解質 5 おわりに 第2部 イオン伝導体の構造制御 第1章 イオニクスを中心とした機能性セラミックスのトータル設計 (東京大学大学院 工学系研究 勇崎 彩 ほか) 1 緒言 2 実験方法 3 結果 3.1 アニーリングによる室温強度変化 3.2 アニーリングによる高温強度変化 3.3 複合体作製時の昇温速度の影響 4 結論 第2章 希土類−珪酸塩をベースとした新しいイオン導電体 (新居浜工業高等専門学校 生物応用化学科 中山 享) 1 はじめに 2 アルカリ金属イオン伝導体 3 酸化物イオン導電体 4 おわりに 第3章 新規な構造を有する高酸化物イオン伝導体 (大分大学 工学部 応用化学科 教授 滝田 祐作 ほか) 1 はじめに 2 非正方晶系高酸化物イオン伝導体 3 ペロブスカイト型酸化物の混合イオン伝導性 4 結言 第4章 ナノ複合化による立方晶ZrO2のイオン伝導性と機械的強度 (大阪大学 産業科学研究所 教授 新原 晧一 ほか) 1 はじめに 2 機械的特性 2.1 室温強度 2.2 高温強度 3 イオン伝導性 3.1 粒界伝導度 3.2 結晶内伝導度 3.3 全イオン伝導度 4 課題と展望 5 おわりに 第5章 ガラスのイオン伝導 (大阪府立大学工学研究科 教授 辰巳砂 昌弘 ほか) 1 はじめに 2 固体電解質としてのガラス 3 イオン伝導性ガラスのガラス生成系 4 ガラス構造とイオン伝導機構 5 リチウムイオン伝導性ガラスの開発動向 5.1 リチウムイオン伝導性酸化物ガラス 5.2 硫化物ベースリチウムイオン伝導性ガラス 5.3 メカニカルミリングによる硫化物ベースリチウムイオン伝導ガラスの作製 5.4 全固体リチウム二次電池への応用 6 おわりに 第6章 非晶質固体電解質の調整技術 (大阪府立大学 工学研究科 辰巳砂 昌弘) 1 はじめに 2 融液超急冷法によるリチウムイオン伝導性オキシスルフィドガラスの作製 3 メカノケミカル法を用いた全固体リチウム二次電池用ガラスセラミックスの開発 4 ゾル−ゲル法によるプロトン伝導性無機−有機複合合体の作製とPEFCへの応用 5 おわりに 第7章 極薄固体電解質製膜技術開発 (京都大学大学院 工学研究科 江口 浩一) 1 はじめに 2 固体電解質燃料電池の構成材料と高出力化 3 自己支持型セルにおける電解質の薄膜化 4 多孔質基板上へのYSZ膜の堆積 4.1 電気化学蒸着法 4.2 プラズマ溶射法 4.3 湿式法 5 その他の作製法 5.1 テープカレンダー法 5.2 気相電解析出法 5.3 電気泳動法 6 おわりに 第3部 イオン性液体 第1章 イオン性液体の進化 (東京農工大学 工学部 生命工学科 教授 大野 弘幸) 1 イオン性液体とは 2 イオン性液体の進化 3 機能デザイン 3.1 Zwitterionic型イオン性液体 3.2 アルカリ金属イオン性液体 3.3 シングルイオニックイオン性液体 4 高分子化 4.1 高分子電解質型塩 4.2 両性電解質型塩 4.3 ゲル型電解質 5 分子集合体への組み込み 6 将来展望 第2章 種類と物性 (京都大学 エネルギー科学研究科 助教授 萩原 理加) 1 はじめに 2 イオン性液体の種類 3 イオン性液体の物理的性質 4 イオン性液体のその他の性質 5 おわりに 第3章 触媒反応の反応場としてのイオン性液体 (東京工業大学大学院 生命理工学研究科 教授 北爪 智哉) 1 はじめに 2 イオン性液体と酸から構築される反応場 3 ルイス酸の担持された系 第4章 イオン性液体中での有機電解反応 (東京工業大学大学院 総合理工学研究科 教授 淵上 寿雄) 1 はじめに 2 イオン性液体中でのボルタンメトリー 3 イオン性液体中での有機電解合成 3.1 α-アミノ酸の電解合成 3.2 環状カーボナート類の電解合成 3.3 有機化合物の選択的電解フッ素化 4 導電性高分子の電解合成 5 イオン性液体中での光触媒反応 6 おわりに 第4部 イオン伝導体の応用 第1章 リチウム電池 第1節 固体電池への応用 (物質・材料研究機構 物質研究所 コンビナトリアルプロジェクト特別研究員 高田 和典 ほか) 1 はじめに 2 固体電池の特長 3 さまざまな固体電池 3.1 Ag+系 3.2 Cu+系 3.3 Li+系 3.4 Na+系 4 全固体リチウム電池の特性 4.1 硫化物ガラスを固体電解質として用いた全固体リチウム電池 4.2 固体電池の新しい可能性 5 おわりに 第2節 無機系固体電解質を用いた全固体リチウム電池 (甲南大学 理工学部 機能分子化学科/甲南大学 ハイテクリサーチ 町田 信也 ほか) 1 はじめに 2 全固体リチウム電池用正極材料 3 全固体リチウム電池用負極材料 4 全固体リチウム電池用の充放電特性 5 おわりに 第3節 リチウムイオン伝導性ガラスを用いた全固体リチウム二次電池 (物質・材料研究機構 物質研究所 コンビナトリアルプロジェクト特別研究員 高田 和典 ほか) 1 はじめに 2 固体電解質と全固体リチウム電池 2.1 全固体リチウム電池開発の歴史 2.2 リチウムイオン伝導性固体電解質 3 硫化物ガラスを用いた全固体リチウム二次電池の特性 3.1 Li3PO4−Li2S−SiS2オキシ硫化物ガラス 3.2 電池特性 4 おわりに 第4節 脂肪族系イオン性液体のリチウム電池電解質への適用 ((独)産業技術総合研究所 関西センター 生活環境系特別研究体 松本 一) 1 はじめに 2 リチウム電池の構成 3 脂肪族四級アンモニウム系イオン性液体 3.1 構造 3.2 電気化学安定性 3.3 粘性 4 リチウム負極を用いた充放電特性評価 5 おわりに 第2章 燃料電池 第1節 固体電解質型燃料電池 ((株)富士電機総合研究所 環境・エネルギー研究所 岩田 友夫) 1 はじめに 2 原理と構造 3 開発状況 4 材料の開発課題 5 用途開発 6 あとがき 第2節 固体電解質型燃料電池の開発状況 ((株)基盤研究所 触媒センサーチーム エネルギー変換 鈴木 稔) 1 はじめに 2 原理と特徴 3 SOFCの構造 4 開発状況 5 開発課題 5.1 高性能化 5.2 長寿命化に関する課題 5.3 低コスト化 6 25kW級SOFCコジェネレーションシステムの運転状況 7 おわりに 第3節 ナトリウム−硫黄電池の開発・実用化 (日本ガイシ(株)NAS事業部 製造部 主任 梶田 雅晴 ほか) 1 はじめに 2 NAS電池の動作原理と構造 2.1 原理 2.2 構造 3 ベータアルミナ管 3.1 機能 3.2 組成と結晶構造 4 ベータアルミナの低抵抗化 4.1 イオン伝導抵抗を支配する要因 4.2 粒内抵抗 4.3 粒界抵抗 4.4 結晶配向 5 結言 第4節 酸化物イオン伝導体の燃料電池への応用 ((独)産業技術総合研究所 電力エネルギー研究部門 燃料電池グループ 主任研究員 堀田 照久 ほか) 1 はじめに 2 SOFC用電解質としての必要条件 3 電解質中の電子・ホール伝導度と効率 4 SOFC用電解質としてのCeO2系酸化物の適用と電極反応 5 まとめ 第5節 無加湿中温型燃料電池用電解質としてのプロトン伝導性イオン性液体の可能性 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門 教授 渡邊 正義) 1 はじめに 2 無加湿中温型燃料電池用電解質としてのイオン性液体 3 アプロティックなイオン性液体とプロティックなイオン性液体 4 プロティックなイオン性液体中おプロトン伝導性 5 電気化学的手法によるプロトン伝導性の確認および燃料電池発電 6 おわりに 第3章 広がる応用 第1節 イオン性液体の電気二重層キャパシタへの応用 (三菱化学(株) 科学技術研究センター 電化研究所 所長 宇恵 誠) 1 はじめに 2 イオン性液体の研究状況 3 イオン性液体の電解質としての歴史 4 イオン性液体の基本物性 4.1 電気伝導率 4.2 分解電圧 4.3 電気二重層容量 5 イオン性液体の電気二重層キャパシタへの応用 5.1 試験セルの作成と特性評価法 5.2 初期特性 5.3 寿命特性 5.4 エネルギー密度 6 おわりに 第2節 ガスセンシングデバイスへの応用 (九州工業大学 工学部 物質工学科 助教授 清水 陽一) 1 はじめに 2 固体電解質センサの検出原理 3 固体電解質センサによる環境ガス検知 3.1 平衡電位型センサ 3.2 混成電位型センサ 3.3 電流検出式センサ 4 おわりに 第3節 固体電解質の資源・環境・エネルギーへの応用 (名古屋工業技術研究所 主任研究官 日比野 高士) 1 はじめに 2 新型燃料電池 3 排ガスセンシング 4 排ガス浄化 5 天然ガスの改質 6 おわりに 第4節 電気化学セルによる高温排ガス中のNOx直接分解 ((独)産業技術総合研究所 シナジーマテリアル研究 環境浄化材料チーム 淡野 正信) 1 はじめに 2 排ガス浄化技術の展開 3 電気化学セル方式の問題点 4 NOx浄化のメカニズム 5 電気化学セルの高次構造制御による高効率NOx浄化 5.1 触媒−電極層の高次構造制御 5.2 電気化学セルのNOx浄化性能と高効率浄化のメカニズム 6 おわりに |