『高効率希土類蛍光体とその応用』
2005年1月 発行
B5版 約280頁
定価 26,000円(税別・送料別)



■刊行主旨■

 ディスプレイ・デバイスはブラウン管からプラズマ・ディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)のフラットパネル・ディスプレイに急速にシフトしつつあり、照明にも白色発光ダイオードという新製品が現れました。製品化が始まった有機エレクトロルミネッセンス(EL)、開発中の無機EL、電界放射ディスプレイ(FED)など、蛍光体へのニーズは多種多様になっています。
 本書は、月刊「マテリアルインテグレーション」に掲載された希土類系蛍光体についての記事を系統的にまとめ、微粒子の合成法や改質法からその応用までを解説したものです。

Contents

第1章 総論

第1節 希土類蛍光体研究の概論
(東京工科大学 バイオニクス学部 教授 山元 明)
1 はじめに
2 真空紫外線励起蛍光体
 2.1 プラズマ・ディスプレイ用蛍光体
 2.2 2 Quantum-cutting processの研究とその波及効果
3 エレクトロルミネッセンス用蛍光体
4 白色発光ダイオード用蛍光体
5 医療用蛍光センサ
 5.1 希土類錯体
 5.2 超微粒子蛍光体
6 おわりに

第2節 希土類系微粒子蛍光体の開発動向
(大阪大学大学院 工学科 教授 今中 信人 ほか)
1 はじめに
2 酸化イットリウム系蛍光体
3 希土類のオキシ硫化物,リン酸塩およびバナジン酸塩蛍光体
4 白色LED (Light Emitting Diode) 用蛍光体
5 その他の蛍光体
6 おわりに


第2章 希土類蛍光体の構造と物性

第1節 複合酸化物を母体とする新しい蛍光体−その結晶構造と発光特性−
(東北大学 多元物質科学研究所 助手 窪田 俊一)
1 はじめに
2 研究の実績
 2.1 新規化合物を母体とした蛍光体
 2.2 結晶構造精密化による発光特性考察の一例
3 おわりに

第2節 分子蛍光体としての希土類ポリ酸とフォトルミネッセンス特性
(東京工業大学 資源化学研究所 助教授 成毛 治朗ほか)
1 はじめに
2 高輝度の分子蛍光体
3 希土類蛍光体との類似性
4 ポリ酸→希土類エネルギー移動
5 希土類→希土類エネルギー移動
6 O−H振動による無輻射失活
7 応用と今後の課題

第3節 希土類イオンの多光子励起発光
(京都産業大学 工学部 教授 坪井 泰住)
1 はじめに
2 アップコンバージョン過程
3 Two-step二光子励起発光
 3.1 LiYF4結晶中のTm3+によるアップコンバージョン
 3.2 YVO4結晶中のTm3+によるアップコンバージョン
4 二光子吸収
5 二光子吸収の応用
 5.1 三次元ナノサイズ微細加工
 5.2 高密度光記録
 5.3 アップコンバージョンレーザー
 5.4 三次元立体画像テレビ
6 まとめ

第4節 微粒子高性能蛍光体と薄膜蛍光体の形成
(静岡大学 電子工学研究所 教授 中西 洋一郎)
1 はじめに
2 電界放射型ディスプレイ
3 微粒子蛍光体の合成
4 薄膜蛍光体の形成
5 おわりに

第5節 希土類アルミネート系蓄光型蛍光体の出現とその光物性
(京都大学 総合人間学部 助手 田部 勢津久)
1 はじめに
2 2価のユーロピウムはなぜおもしろい?
3 アルミネート結晶中の長残光特性
4 蓄光型蛍光体と発光の原理
5 トラップエネルギーを求めるには?
6 機構,トラップは何か?
7 新しい応用の可能性


第3章 蛍光ガラス

第1節 蛍光ガラスの開発
((株)住田光学ガラス 研究開発本部 素材開発部 沢登 成人)
1 はじめに
2 希土類蛍光ガラスの励起・発光特性
3 蛍光ガラスの組成的特徴
4 蛍光ガラスのその他の特性
5 蛍光ガラスの応用例−ファイバー
6 おわりに

第2節 ゾル−ゲル法によるナノ粒子分散蛍光ガラスの作製
((独)産業技術総合研究所 光技術研究部門 ガラス材料技術グループ 主任研究員 村瀬 至生)
1 はじめに
2 半導体ナノ粒子の発光
3 水分散性CdTeナノ粒子の作製
4 有機アルコキシシラン中への保持
5 まとめ

第3節 希土類イオンを含有するフォトニクスガラス
(立命館大学 理工学部 応用化学科 教授 小島 一男)
1 はじめに
2 ZnCl2系ガラス
 2.1 Er3+, Nd3+およびHo3+含有ZnCl2系ガラスのアップコンバージョン蛍光
 2.2 Eu2+, Sm3+およびSm2+含有ZnCl2系ガラスのダウンコンバージョン蛍光(通常の蛍光)
3 ゾル−ゲルガラス
 3.1 Er3+およびNd3+のアップコンバージョン蛍光
 3.2 Tb3+の緑色蛍光と長残光特性
 3.3 Eu2+, Eu3+の蛍光と光スペクトルホールバーニング特性
4 薄膜
5 まとめ


第4章 PDPへの応用

第1節 PDP蛍光体の技術動向
(化成オプトロニクス(株)小田原工場 蛍光体技術室 グループマネージャー 久宗 孝之)
1 はじめに
2 PDP用蛍光体に求められる特性
 2.1 輝度
 2.2 色度
 2.3 残光
 2.4 プロセス劣化耐性
 2.5 寿命
 2.6 粉体特性(塗布特性)
 2.7 電気的特性
3 現行PDP用蛍光体の特性と課題
 3.1 青色蛍光体
 3.2 緑色蛍光体
 3.3 赤色蛍光体
4 PDP用蛍光体の特性改善に向けた動き
 4.1 青色蛍光体の改善
 4.2 緑色蛍光体の改善
 4.3 赤色蛍光体の改善
 4.4 新しい改善へ向けた試み
5 おわりに

第2節 カラーPDP用蛍光体の現状と開発動向
(鳥取大学 工学部 電気電子工学科 田中 省作)
1 はじめに
2 電子ディスプレイ(カラー・テレビ)と蛍光体
3 現行のPDP用蛍光体の課題
4 最近のPDP蛍光体の開発動向
 4.1 青色BaMgAl10O17:Eu2+蛍光体の酸化による輝度低下とその改善の試み
 4.2 劣化特性と優れた新規青色蛍光体探索の試み(CaMgSi2O6:Eu2+蛍光体)
 4.3 緑色蛍光体の輝度飽和とその改善の可能性
 4.4 赤色蛍光体の色純度(色度座標値)の改善
5 おわりに


第5章 無機EL素子と希土類蛍光体

第1節 無機EL素子の現状と動向
(明治大学 理工学部 電子通信工学科 専任講師 三浦 登)
1 はじめに
2 ZnS:Mn黄橙色発光素子
3 青色EL材料
4 フルカラーELディスプレイ
5 おわりに

第2節 フルカラー無機ELディスプレイの最近の開発動向
(鳥取大学 工学部 電気電子工学科 教授 田中 省作)
1 はじめに
2 薄膜ELデバイスの動作機構とEL発光材料
3 発光中心とカラーELディスプレイ
 3.1 遷移金属イオン
 3.2 希土類イオン
4 薄膜発光層/厚膜絶縁層混成構造EL素子
5 薄膜発光層/厚膜絶縁層混成構造を用いたカラーELディスプレイ
6 Eu2+を発光中心とするカラー薄膜EL材料
7 まとめ


第6章 光増幅器への応用

第1節 波長多重通信光増幅器用新規酸化物ガラスにおけるTm,Erイオンの光物性
(京都大学 人間・環境学研究科 助教授 田部 勢津久)
1 はじめに
2 テルライトガラス中のTmイオンの4f輻射遷移確率と量子効率
3 Tmイオンにおけるクロス緩和とエネルギー移動
4 Er3+イオンの1.5μm遷移確率と広帯域発光ホストの設計
5 重金属酸化物ガラスにおける広帯域発光と増幅利得
6 結論

第2節 波長多重通信用光ファイバ増幅器の開発動向
(京都大学 人間・環境学研究科 助教授 田部 勢津久)
1 はじめに
2 希土類レーザガラスとファイバレーザの歴史
3 シリカ系EDFの特性改善
4 新規ホスト材料開発によるエルビウムの広帯域化
5 TDFAとその励起方式
6 まとめ


第7章 拡がる応用

第1節 水銀フリーランプ用の新しい蛍光体の開発
(新潟大学大学院 自然科学研究科 戸田 健司)
1 はじめに
 1.1 なぜ水銀フリーランプなのか?
 1.2 水銀フリーランプの構造と蛍光体
2 真空紫外線励起用蛍光体の開発
 2.1 どのような特性が要求されるのか?
 2.2 水銀フリーランプ用蛍光体の設計指針
 2.3 新しいホウリン酸塩系青色蛍光体Sr6BP5O20:Eu2+
3 最近の真空紫外線励起用蛍光体の開発動向
4 おわりに

第2節 希土類蛍光体を用いた白色LEDの現状と将来
(日亜化学工業(株) 第2部門技術本部 第1技術部 市川 将嗣)
1 はじめに
2 白色LEDの発光原理と構造
3 YAG蛍光体
4 照明光源としての白色LEDの開発
5 おわりに

第3節 希土類錯体蛍光ラベル剤の開発と生命科学への応用
(早稲田大学大学院 理工学研究科 理工学部化学科 教授 松本 和子)
1 はじめに
2 希土類錯体蛍光ラベル剤の開発
 2.1 β-ジケトン類錯体蛍光ラベル剤
 2.2 芳香族アミン類錯体蛍光ラベル剤
3 生命科学における希土類錯体蛍光ラベル剤の応用
 3.1 時間分解蛍光イムノアッセイへの応用
 3.2 時間分解蛍光DNAハイブリダイゼーションアッセイへの応用
4 おわりに

第4節 シンチレータ結晶の最近の進歩
((株)第一機電 石井 満)
1 はじめに
2 最近のシンチレータ応用装置
 2.1 医療診断装置の発展と課題
 2.2 基礎物理研究におけるシンチレータの応用
 2.3 中性子検出器
3 ガンマ線用シンチレータ
 3.1 実用中のシンチレータ結晶
 3.2 開発中の新しいシンチレータ
4 中性子検出用シンチレータ
5 おわりに

第5節 希土類イオン付活永続性ホールバーニング材料の開発
(名古屋工業大学 材料工学科 野上 正行)
1 まえがき
2 希土類イオンドープガラスの作製
3 PSHBへの水酸基の寄与
4 室温ホールバーニング
 4.1 Eu3+ドープガラス
 4.2 Sm2+イオンドープガラス
5 むすび

第6節 超短パルスレーザ照射による光とガラスとの相互作用 −ガラスからの非線形光学結晶育成−
(セントラル硝子(株)化学研究所 三浦 清貴 ほか)
1 はじめに
2 ガラス内部への超短パルスレーザ照射効果
 2.1 希土類イオンの価数変化
 2.2 光誘起屈折率変化
3 ガラス内部への非線形光学結晶育成
 3.1 ガラス内部での単結晶成長
4 おわりに