『フェライト材料の合成とその応用』 −ベンガラからナノコンポジット磁性材料まで− 2005年1月 発行 B5版 360頁 定価 26,000円(税別・送料別) ■刊行主旨■ フェライト材料の中で、ベンガラは古来より着色材料として用いられてきた赤褐色の酸化鉄顔料であり、今日では、着色顔料のみならず、セラミック工業、化学工業、電子工業、交通産業、農業、バイオ及びエコロジー産業など種々の分野において幅広く使用されている古くて新しい工業材料です。 本書は、月刊「マテリアルインテグレーション」に掲載された、ベンガラを古代から連綿と続く歴史とともに解説した連載「ベンガラロード紀行」と、窒化物・希土類・コンポジットなどの展開目覚ましいフェライト系磁性新材料についての記事を中心に収録・再編集し系統的にまとめたものです。 Contents 第T部 ベンガラロード紀行 (戸田工業(株) 顧問 堀石 七生) 第1節 古代ベンガラロード 1 プロローグ 2 地球創生のドラマを記憶するベンガラ 3 1万7千年前のベンガラのアート 4 セラミックスのルーツは6千年前の中国に 5 東西文明の交流 6 羅針盤になったベンガラ 第2節 近代日本のベンガラロード 1 国産ベンガラ 2 吹屋の歴史 3 吹屋のローハ法 4 日本の近代化とベンガラ 5 ベンガラ工業の近代化 5.1 第1次近代化 5.2 第2次近代化 5.3 第3次近代化 第3節 湿式法へのベンガラロード 1 原料鉄塩水溶液 1.1 水に溶けた鉄の素顔 1.2 鉄塩水溶液の加熱生成物 1.3 アルカリ添加生成物 2 水酸化第一鉄Fe(OH)2の化学 2.1 Fe(OH)2コロイド 2.2 酸化反応と生成物 2.3 反応機構 第4節 工業化へのベンガラロード 1 Green rust‐Uの化学 2 pHコントロール法 2.1 反応のメカニズム 2.2 反応の特徴 2.3 応用分野 3 二段酸化法 3.1 反応のメカニズム 3.2 反応の特徴 3.3 応用分野 第5節 進化へのベンガラロード 1 着色ベンガラから磁性ベンガラへ 2 ヘマタイト転換法 2.1 反応のメカニズム 2.2 反応の特徴 2.3 応用分野 第6節 ナノテク化へのベンガラロード 1 炭酸鉄コロイドの化学 1.1 水酸化アルカリから炭酸アルカリへ 1.2 炭酸鉄について 2 炭酸鉄FeCO3コロイド法 2.1 反応のメカニズム 2.2 反応の特徴 2.3 応用分野 第7節 フェライトへのベンガラロード 1 文明を支える磁石 2 磁石王国日本 3 フェライトの種類 4 軟質磁性フェライト 5 硬質磁性フェライト 第8節 磁気テープへのベンガラロード 1 20世紀は磁気記録から 2 磁気記録の技術開発と工業化 3 軽薄短小化へのトレンド 4 磁性ベンガラのピンチ 5 高保磁力Hc化への挑戦 6 コバルト被着型針状酸化鉄磁性粉の誕生 7 もう一つのトレンド 8 高度情報化社会へ 第9節 磁性トナーへのベンガラロード 1 電子写真現像 1.1 電子プリンター(LBP)の構造 1.2 トナーの製造方法 1.3 磁性トナーを用いる現像法 2 電子写真用磁性材料 2.1 磁性トナー用酸化鉄粉 2.2 環境対応型Fe3O4粒子粉末 2.3 現像ローラー用磁石 2.4 磁性キャリア 3 電子写真のトレンド 第10節 静脈産業へのベンガラロード 1 静脈産業と水酸化第一鉄Fe(OH)2コロイドの化学 2 ダイオキシン類発生抑止と炭酸鉄FeCO3コロイドの化学 2.1 燃焼を促進するナノ酸化鉄粒子 2.2 CO2排ガスと炭酸鉄FeCO3コロイドの化学 3 環境ルネッサンス 第11節 人に優しいカラーリングへのベンガラロード 1 自然環境との調和 1.1 コンクリート専用ベンガラの開発 1.2 自然との調和 2 市街地道路のカラーリング 2.1 カーレーンのカラー舗装 2.2 透水性カラー舗装道 3 居住環境の保全 3.1 水性塗料 3.2 粉体塗料 4 北空昼光 第12節 未来へとつづくベンガラロード 1 生物とベンガラの共生 1.1 生物磁石 1.2 地磁気と生物 2 生物磁石の生成 2.1 ヒザラ貝について 2.2 走磁性細菌について 3 バイオ分野へ広がるベンガラの機能 3.1 メディカルバイオ関連 3.2 アグリバイオ関連 4 エピローグ 第U部 磁性体材料 第1章 フェライト 第1節 フェライト原料酸化鉄 (アイロックスエヌケーケー 前田 友夫) 1 はじめに 2 塩酸回収・酸化鉄製造プロセスと不純物の起源 3 廃酸の精製処理 4 高純度酸化鉄の製造 5 おわりに 第2節 フェライトコアのリサイクルと環境保全へのアプローチ (富士電気化学 研究技術本部 基盤研究所 松尾 良夫) 1 はじめに 2 FDKのリサイクルフェライトに関するアプローチ 2.1 MnZnフェライトの例 2.2 NiZnフェライトの例 3 湖沼汚泥の再利用 4 おわりに 第3節 ハードフェライト磁石 (明治大学 工学部 電気電子工学科 山元 洋) 1 まえがき 2 ハードフェライト磁石の講演題目 3 講演内容 4 あとがき 第4節 W型六方晶フェライト磁石 (明治大学 工学部 電気電子工学科 山元 洋) 1 まえがき 2 W型フェライトの結晶構造と磁気物性 3 焼結W型フェライトの磁石特性 4 ボンド磁石用素材としての可能性 5 まとめ 第5節 ソフトフェライト ((株)トーキン 電子材料事業本部 商品開発部長 大槻 悦夫) 1 まえがき 2 高透磁率フェライト 2.1 背景 2.2 フェライトの透磁率の解析 2.3 材料開発 3 電源フェライト 3.1 背景 3.2 Mn-Znフェライトの損失解析 3.3 材料開発 4 まとめ 第6節 フェライト薄膜・微粒子 (東京工業大学 電子物理工学専攻 阿部 正紀) 1 はじめに 2 薄膜・微粒子の磁性 2.1 MnZnフェライト中のイオンのサイト分布と磁性 2.2 α-Fe2O3/CoFe2O3二層膜間の交換相互作用 3 磁気光学および光デバイスへの応用 3.1 磁性フォトニック結晶中の磁気光学効果増大 3.2 フェライト膜の光記録への応用 4 薄膜・微粒子作製法 4.1 水溶液中からのフェライト膜・微粒子作製 4.2 グラニュラー複合膜の新作製法 5 おわりに 第2章 磁性窒化物 第1節 ナイトライドセラミックス応用の現状 (早稲田大学 理工学部 教授 一ノ瀬 昇) 1 はじめに 2 磁性窒化物とその応用 2.1 磁性窒化物の分類 2.2 α”Fe16N2系巨大磁化材料 2.3 Fe-M-N(M= Zr, Hf, Nb, Ta)系薄膜磁気ヘッド材料 2.4 Sm2Fe17Nx系磁石材料 3 おわりに 第2節 Fe16O2単結晶薄膜の磁性 ((株)日立製作所 中央研究所 技師長 杉田 愃 ほか) 1 緒言 2 実験結果 3 計算結果 4 今後の課題とまとめ 第3節 Fe16N2の低温合成 (北海道大学大学院 工学研究科 教授 吉川 信一) 1 はじめに 2 窒化鉄の熱的な不安定性 3 低温窒化法によるFe16N2の合成 4 窒化鉄系磁性微粒子分散膜および多層膜 5 まとめ 第4節 Sm‐Fe‐N系磁性体 (広島大学大学院 生物圏研究科 大学院生 小山 佳一) 1 はじめに 2 窒化処理 3 結晶構造 4 磁気特性 4.1 飽和磁気モーメント 4.2 キュリー温度 4.3 結晶磁気異方性 5 おわりに 第5節 Sm‐Fe‐N系永久磁石 (日立金属(株) 先端エレクトロニクス研究所 新藤 幹夫 ほか) 1 はじめに 2 基本磁気特性と結晶構造 3 プロセス技術の開発 4 ボンド磁石の磁気特性 5 まとめ 第3章 希土類磁石材料とその応用 第1章 希土類資源の動向とその有効利用 (大阪大学 先端科学技術共同研究センター 町田 憲一 ほか) 1 はじめに 2 希土類資源の分布と産出量 3 希土類磁石の用途と生産量 4 磁石廃棄物とリサイクル 4.1 磁石の製造工程とスクラップ 4.2 磁石スクラップのリサイクル 4.3 固形磁石スクラップの等方性ボンド磁石への再生 4.4 スラッジ粉末の電波吸収材への再生 5 おわりに 第2節 高性能微小希土類磁石の開発と応用 (科学技術振興事業団 研究成果活用プラザ大阪 鈴木 俊治 ほか) 1 はじめに 2 機械加工による磁気特性の変化 3 表面改質法による微小高性能磁石の開発 4 実用モータの試作と特性評価 5 まとめ 第3節 高性能小型磁石モータの開発動向と用途 (松下電器産業(株) モータ社 モータテクノロジーセンター 山下 文敏) 1 はじめに 2 永久磁石界磁型直流モータ 2.1 環状磁石界磁型直流モータ 2.2 円弧状磁石界磁型直流モータ 3 永久磁石界磁型無鉄心モータ 4 ブラシレスモータ 4.1 径方向空隙型ブラシレスモータ 4.2 軸方向空隙型ブラシレスモータ 5 ステッピングモータ 6 まとめ 第4節 高性能ネオジム焼結磁石の開発動向とその応用 (住友特殊金属(株) 支配人 技術開発本部 主席研究員 石垣 尚幸 ほか) 1 永久磁石材料の発展 2 向上する高性能ネオジム磁石の特性 3 耐熱性と耐食性の向上 4 ネオジム焼結磁石の応用 4.1 ハードディスクドライブ(HDD)への応用 4.2 MRIへの応用 4.3 放射光発生光源への応用(アンジュレータ,ウイグラー) 4.4 エレクトロニクス分野への応用 4.5 自動車分野への応用 4.6 大型モータ,発電機への応用 5 将来への展望 第4章 新しいプロセス技術 第1節 スプレー造粒粉によるNd‐Fe‐B磁石の新しい成形技術 (住友特殊金属(株) 研究開発部 副主任研究員 槙田 顕 ほか) 1 はじめに 2 磁石中の酸素量のコントロール 2.1 磁石中に許容される酸素量 2.2 スラリー中での原料の酸化抑制 2.3 水素雰囲気での脱バインダー 3 超小型Nd‐Fe‐B磁石の成形 3.1 スプレー造粒粉の配向性 3.2 スプレー造粒粉による成形体の寸法精度 4 ニアネットシェイプ成形への挑戦 第2節 金属酸化物とアンモニア気流の反応による窒化物の合成 (大阪大学大学院 工学研究科 助手 中川 貴 ほか) 1 はじめに 2 金属酸化物とアンモニア気流の反応による窒化物生成の反応経路 3 アンモニアによる酸化物の還元 4 まとめ 第3節 磁性細菌におけるマグネタイト微結晶形成機構のタンパク質レベルでの解明 (東京農工大学 工学部生命工学科 松永 是 ほか) 1 はじめに 2 磁性細菌について 3 磁気微粒子の特性 4 磁気微粒子生成遺伝子の解析 5 磁性細菌粒子膜タンパクの解析とその応用 5.1 磁気微粒子膜および細胞膜の二次元電気泳動 5.2 磁気微粒子膜タンパクmps遺伝子のシークエンス解析 5.3 Mps融合ルシフェラーゼの局在性についての検討 6 まとめ 第5章 その他 第1節 超磁歪材料 (東北大学電気通信研究所 教授 荒井 賢一 ほか) 1 はじめに 2 磁歪現象の評価基準 3 超磁歪材料とその応用 4 まとめ 第V部 ナノ複合磁性材料 第1節 多機能型ナノコンポジット材料の現状と将来展望 (大阪大学産業科学研究所 助教授 関野 徹) 1 はじめに 2 セラミックス/磁性金属ナノコンポジットのプロセス 3 微細組織 4 機械的性質 5 磁気的性質 6 原子レベルで同時に構造制御したナノコンポジット 7 おわりに 第2節 希土類ナノコンポジット磁石 (大阪大学 先端科学技術共同研究センター 教授 町田 憲一) 1 はじめに 2 理論 3 ナノコンポジット磁石の作製 3.1 アモルファス合金の結晶化 3.2 メカニカルアロイング 3.3 多層膜化 4 おわりに 第3節 スプリング磁石−ナノコンポジット磁石の特性と特徴− (住友特殊金属(株)開発本部研究開発部 広沢 哲) 1 はじめに 2 ナノコンポジット磁石の物質設計 3 スプリング磁石 3.1 ナノコンポジット磁石の現状 3.2 FexB-Nd2Fe14B系ナノコンポジット磁石 4 ナノコンポジット磁石の課題と今度の展望 第4節 磁器冷凍機能をめざす新しいナノ複合材料の展望 (大阪大学大学院 工学研究科 山本 孝夫 ほか) 1 はじめに 2 磁器熱量効果・磁器冷凍の原理 3 磁器熱量効果のエントロピー変化 4 磁器冷凍の現状 5 磁器冷凍の制約条件 6 超常磁性ナノ複合材料 7 ナノ複合材料の評価法 8 おわりに 第5節 磁器冷凍用のナノクラスタコンポジェット磁石の開発 (大阪大学 産業科学研究所 教授 新原 晧一 ほか) 1 はじめに 2 高温磁器冷凍動作のへの指針 3 ナノクラスタコンポジット磁石の有意性 4 ナノクラスタコンポジット磁石お創製と評価 5 おわりに 第6節 ナノコンポジット化による構造用セラミックスの応力検知機能の付与 (名古屋工業技術研究所 基礎部 主任研究官 淡野 正信) 1 はじめに 2 磁性を付与したナノコンポジットの作製 2.1 ナノコンポジット化による,磁性付与構造用セラミックスの創製 2.2 複合粉体の合成プロセス 2.3 ナノコンポジットの焼結プロセス 3 磁性ナノコンポジットのリモートセンシング機能の評価 3.1 リモートセンシング機能 3.2 ナノサイズ効果 3.3 リモートセンシング機能の評価システム 3.4 リモートセンシング特性 3.5 能動材料としての可能性 4 おわりに |