『高周波用電子材料とデバイス』―ミリ波帯,マイクロ波帯への対応― 増補改訂版
2003年4月:発行
B5版 500頁
定価 26,000円(税別・送料別)


■刊行主旨■

 衛星放送を始め携帯電話など,通信分野でのマイクロ波の利用が日常的なものとなっています.現在,通信機器の携帯化が急速に進化していますが,これは移動体通信機器に使用される高周波(マイクロ波)部品を含め各種デバイスの小型化によるものです.この背景には新規な高周波セラミック材料の開発による電子部品の高機能化,小型化,軽量化などが大きく貢献しています.今後,来るべき通信・コンピューターが互いに融合した高度情報化社会においても,高周波セラミック材料の開発と発展がますます重要となっています.
 本書は,『高周波セラミックス材料とその応用』以降これまでに月刊「マテリアルインテグレーション」で紹介された実装技術に関する記事を中心に新しく加え,再編集し,今後の技術方向を明確にし応えられる内容に致しました.

Contents

第1章 高周波セラミック材料と応用デバイス

第1節 マルチメディア時代と電波利用(東京工芸大学 小西 良弘氏)
 1 概論
 2 放送分野−とくに衛星放送ふまえて
 3 通信分野
  3.1 最近の移動体通信の動向
  3.2 今後の移動体通信
 4 サブミリ波〜ミリ波帯を用いた短距離の情報のやりとり
 5 移動体通信における技術開発−とくに高周波技術に関して−
  5.1 アンテナ技術
  5.2 フィルタ
  5.3 その他の回路と今後の課題
 6 マルチメディアから見たマイクロ波回路技術の展望
  6.1 用途別に見た展望
  6.2 マイクロ波集積回路の今後のポイント
  6.3 とくにセラミック材料開発面から見た今後のポイント
 7 あとがき

第2節 マイクロ波誘電体セラミックスと移動体通信デバイス(松下電器産業 加賀田 博司氏ほか)
 1 はじめに
 2 移動体通信用マイクロ波誘電体セラミックスの現状と動向
  2.1 端末機用(小電力基地局含む)
  2.2 高電力基地局デバイス用
 3 移動体通信デバイスの具体例
  3.1 スイッチ付きアンテナ共用器
  3.2 積層プレーナフィルタ
  3.3 基地局用ノッチフィルタ
 4 むすび

第3節 マイクロ波帯・ミリ波帯で使用される誘電体セラミックス(村田製作所 立川 勉氏ほか)
 1 はじめに
 2 誘電体共振器材料のマイクロ波誘電特性
 3 誘電体共振器の移動体通信用電子部品への応用
  3.1 携帯電話用アンテナ共用器
  3.2 移動体通信基地局アンテナフィルタ
  3.3 ミリ波通信用フィルタ
  3.4 高温酸化物超伝導体のマイクロ波フィルタへの応用
 4 まとめ

第4節 コミュニケーション機器に使われるフェライト応用デバイスの発達(TDK 橋本 忠志氏)
 1 はじめに
 2 マイクロ波フェライトの特性
 3 開発初期
 4 接合型サーキュレータの登場
 5 同軸型デバイス
 6 集中定数型サーキュレータ
 7 基板型デバイス
 8 ラッチングデバイス
 9 おわりに

第2章 高周波電子材料の合成

第1節 セラミック電子部品マイクロ化技術50年の進歩(湘南工科大学 岡崎 清氏)
 1 まえがき
 2 チタン酸バリウム(BaTiO3)の発見と実用化
 3 グレンバウンダリの役割
 4 昭和26年に製造されたTiO2コンデンサの電極界面の解析
 5 強誘電体-リラクサ系積層コンデンサ材料\の進歩
 6 電極材料,その他関連技術の進歩
 7 後書き

第2節 マイクロ波誘電体の組成研究から実用化まで(大研化学工業 西垣 進氏)
 1 はじめに
 2 誘電体共振器の設計条件
  2.1 誘電率と周波数帯域の関係
  2.2 Q,τf と共振器の関係
  2.3 周波数帯域や目的により異なる誘電体共振器
 3 実用マイクロ波誘電体組成の現状と課題
 4 τεがプラスのBaWO4の発見とBaTi49系の温度係数の改良
  4.1 BaTi49(=BaO・4TiO2)+5yWO3
 5 BaO・Sm2O3・5TiO2近傍組成とBaサイト置換によるε,τf の改良
  5.1 (Ba1-xSrx)O・Sm2O3・4.7TiO2
 6 Ba6-3XR8+2XTi18O54タングステンブロンズ型固溶体の発見とRサイト複合置換によるε,τfの改良
  6.1 Ba6-3XR8+2XTi18O54固溶体単結晶
  6.2 Ba6-3XR8+2XTi18O54(0≦x≦1)の微構造とマイクロ波特性
 7 あとがき

第3節 TiO2BaO系マイクロ波誘電体(名古屋大学 平野 眞一氏,菊田 浩一氏)
 1 はじめに
 2 BaO-TiO2系化合物
 3 Ba2Ti9O20セラミックスの合成
 4 BaTi5O11セラミックスの合成
 5 おわりに

第4節 高周波セラミック材料とその評価(ファインセラミックスセンター 角岡 勉氏)
 1 はじめに.
 2 高周波絶縁用セラミックス.
  2.1 アルミナ(Al2O3
  2.2 ステアタイト(MgO・SiO2
  2.3 フォルステライト(2MgO・SiO2
  2.4低損失フォルステライト磁器の開発
 3 高周波セラミックスの評価
  3.1 電気的評価

第5節 高周波実装用低誘電損失樹脂材料(日立製作所 天羽 悟氏ほか)
 1 緒言
 2 絶縁材料の低誘電正接化
 3 多官能スチレン化合物の基本特性
 4 多官能スチレン化合物の応用
 5 結言

第6節 ミリ波帯における低損失誘電体材料の評価法
(埼玉大学 小林 禧夫氏ほか)
 1 はじめに
 2 εr, tanδの測定原理
 3 温度依存性の自動測定システム
 4 モード判別および概略値εa
 5 測定結果
 6 まとめ

第3章 デバイス化技術

第1節 低温焼結セラミック材料を用いたマイクロ波フィルタ(福井村田製作所 大久保 愼一氏)
 1 はじめに
 2 試料の作成
  2.1 組成系
  2.2 試料加工条件
 3 セラミック特性
  3.1 セラミックの電気.機械的特性
  3.2 セラミック微細構造
  3.3 CZG 材の焼結挙動
  3.4焼成安定性
 4 チップ積層マイクロフィルタへの応用
  4.1 構造・特徴
 5 まとめ

第2節 チップインダクタ用フェライト(TDK 野村 武史氏,大井 明徳氏)
 1 はじめに
 2 積層型チップインダクタ
 3 チップインダクタ用磁性体材料と内部導体材料
  3.1 磁性体材料
  3.2 内部導体材料
 4 チップインダクタの高性能化
  4.1 Ag 内部導体によるマクロ的残留応力
  4.2 ミクロ的残留応力
 5 おわりに

第3節 マイクロ波素子用化合物半導体結晶の開発(住友電気工業 松本 和久氏)
 1 はじめに
 2 GaAs 結晶成長技術
 3 高品質化動向
  3.1 HB 法
  3.2 VB 法,VGF 法
  3.3 砒素雰囲気下引上法
 4 おわりに

第4節 構造制御による新しい電子セラミックスの開発(松下電器産業 西田 正光氏ほか)
 1 はじめに
 2 組成領域共存構造圧電セラミックス
 3 試料の作製
 4 単一組成の圧電セラミックス
  4.1 微粉砕粉末の焼結性
  4.2 圧電特性
  4.3 共振周波数の温度依存性
 5 組成共存構造圧電セラミックス
 6 まとめ

第5節 強誘電体材料のナノコンポジット―コア・シェル構造―を有するコンデンサ(防衛大学校 山本 孝氏)
 1 はじめに
 2 コンデンサ材料
 3 小型・大容量コンデンサの構造
 4 X7R 規格を有するコンデンサ
 5 コア・シェル微細構造と誘電率-温度特性

第6節 MOCVD 法による(Ba,Sr)TiO3薄膜積層コンデンサの試作及び評価(村田製作所 竹島 裕氏,坂部 行雄氏)
 1 はじめに.
 2 成膜及び評価方法
 3 結果及び考察
  3.1 BST 単層薄膜
  3.2 BST/Pt 薄膜積層コンデンサ
 4 まとめ

第7節 ドクターブレード法(TDK 野村 武史氏,佐藤 茂樹氏)
 1 はじめに
 2 積層形電子セラミック部品
 3 シート成形技術
  3.1 セラミックコンデンサの製造方法プロセス
  3.2 厚膜成形技術の分類
  3.3 ドクターブレードを用いたシート成形機の構造
  3.4 ドクターブレードの構造
  3.5 積層セラミックコンデンサに要求されるシート性状8
 4 シート成膜状態に影響を及ぼす因子
  4.1 塗料粘度の影響
  4.2 塗料とシートの性状の関係
  4.3 キャスト条件の影響
 5 おわりに

第8節 レーザ加工超小型積層チップインダクタにおける高精度印刷技術(太陽誘電 井上 泰史氏,藤本 正之氏)
 1 はじめに
 2 レーザ加工法
 3 高精度印刷
  3.1 実験方法
  3.2 実験結果
 4 積層チップインダクタへの応用
 5 おわりに

第9節 多層セラミックデバイス(村田製作所 中島 規巨氏)
 1 まえがき
 2 技術の推移
 3 材料,プロセス
  3.1 材料
 4 セラミック多層プロセス
 5 応用
  5.1 多層デバイス
  5.2 多層サブモジュール
  5.3 機能基板
 6 今後の展開
 7 まとめ

第10節 高周波通信用LTCCモジュール(NEC 生稲 一洋氏)
 1 はじめに
 2 高周波モジュールの課題とLTCC
 3 衛星通信用地上局モジュール
 4 ミリ波帯通信モジュール
 5 今後の展開

第4章 高周波フィルタ

第1節 総論(早稲田大学 一ノ瀬 昇氏)
 1 はじめに
 2 高周波フィルタの分類
 3 誘電体フィルタ
 4 SAW フィルタ
 5 おわりに

第2節 LTCCデバイス-アンテナスイッチフィルタの開発-(松下電子部品 田中 正治氏ほか)
 1 要旨
 2 はじめに
 3 積層スイッチフィルタの要素技術
 4 積層スイッチフィルタの構成
 5 SAWフィルタ内蔵積層スイッチフィルタ
 6 高密度実装化に対する取り組み
 7 将来の積層スイッチフィルタ

第3節 チップフィルタについての最新動向(TDK 高谷 稔氏ほか)
 1 はじめに
 2 積層フィルタの分類
 3 ビデオ用積層チップLC フィルタMXF シリーズ
  3.1 製品の特徴
  3.2 実践化の背景
  3.3 特徴
 4 移動体通信用積層フィルタDEA,MRF シリーズ
  4.1 製品の概要
  4.2 実践化の背景
  4.3 製品のラインナップ
  4.4 DEAシリーズ
  4.5 MRFシリーズ
 5 今後の展開

第4節 移動体通信に使われるSAW フィルタ(日本電波工業 芦田 佐吉氏,西山 茂雄氏)
 1 はじめに
 2 移動通信技術に関する問題
 3 SAW デバイスとは
 4 弾性表面波素子作製プロセス
 5 弾性表面波素子用単結晶
 6 移動体通信に用いられるフィルタの例
 7 おわりに

第5節 ダイヤモンドを利用したSAWフィルタ(住友電気工業 鹿田 真一氏)
 1 はじめに
 2 ダイヤモンドウェハ
 3 材料特性とダイヤモンドSAW フィルタの特徴
 4 ダイヤモンドSAWフィルタの各種通信分野での応用
 5 おわりに

第6節 吸収型高域遮断フィルタを使ったスペクトラム・マネージメント(TDK テクノ 三浦 太郎氏)
 1 はじめに
 2 吸収型高域遮断フィルタの基本構想
 3 吸収型高域遮断フィルタに関する理論的考察
 4 吸収型高域遮断フィルタの製作と応用
 5 吸収型高域遮断フィルタによるコンピュータ・バスの高速化
 6 バスへの吸収型高域遮断フィルタ装荷
 7 コンピュータ・バスのスペクトラム・マネージメント
 8 高域遮断フィルタ線路バスからの放射
 9 まとめ

第5章 コンデンサ

第1節 コンデンサ(福井村田製作所 林 雅美氏,尾崎 武文氏)
 1 はじめに.
 2 積層セラミックコンデンサの各市場における動向
  2.1 携帯型機器市場における動向
  2.2 一般電子機器市場における動向
  2.3 電源市場における動向
 3 積層セラミックコンデンサの開発動向
  3.1 小型・高容量化の動向
  3.2 低コスト化の動向
 4 当社の積層セラミックコンデンサの商品シリーズ
 5 おわりに

第2節 大容量積層セラミックコンデンサ(東芝 金井 秀之氏ほか)
 1 はじめに
 2 試料の作製
 3 結果
  3.1 初期特性
  3.2 微細構造
  3.3 MLC の電気的特性
 4 高密度MLC の試作
 5 まとめ

第6章 インダクタ

第1節 チップインダクタ(TDK 高谷 稔氏,野村 武史氏)
 1 はじめに
 2 チップインダクタの概要
 3 積層チップインダクタについて
 4 積層チップインダクタの性能
 5 信頼性
 6 実装方法
 7 形状寸法と包装形態
 8 高周波積層インダクタについて
 9 将来的な展望

第7章 アンテナ,FBAR

第1節 高周波セラミックチップアンテ(太陽誘電 星 健一氏ほか)
 1 はじめに
 2 主なアンテナの種類と原理
  2.1 モノポールアンテナ
  2.2 逆Fアンテナ
  2.3 セラミックス化の流れ
 3 高周波用セラミックチップアンテナ開発
  3.1 開発品の特徴
  3.2 アンテナ評価手法
  3.3 アンテナ用誘電体材料
  3.4 アンテナプロセス技術
 4 チップアンテナ特性例
 5 おわりに

第2節 ミリ波ポスト壁導波路給電スロットアレーアンテナの効率への誘電体基板材料の影響(東京工業大学 広川 二郎氏)
 1 はじめに
 2 ポスト壁導波路給電誘電体基板スロットアレーアンテナ
 3 ポスト壁導波路の損失要因
 4 アンテナ面積の効率への依存性
 5 誘電体基板材料の検討項目
 6 まとめ

第3節 FBAR技術とFBAR製品の携帯電話への応用例(アジレント・テクノロジー 新保 利幸氏)
 1 はじめに
 2 FBAR技術
  2.1 Film
  2.2 Bulk
  2.3 Acoustic
  2.4 Resonator
 3 FBARの特性および他技術との比較
 4 FBAR技術の応用例
  4.1 北米PCS用デュプレクサ
  4.2 北米PCS用RF送信フィルタ (フル・バンド)
 5 FBAR製品開発動向