セラミックス薄膜の原子・分子レベル制御技術とデバイス
2000年3月発行
B5版 500頁
定価 24,000円(税別)


■刊行主旨■
 21世紀における社会・産業の発展は,知的センサシステム,情報伝達システム,環境バイオシステムなどの分野における多機能変換材料の創製にかかっています.従来の機能変換機能材料では主として単独の変換機能が利用されてきました.しかしながら,通常のマクロ・ミクロプロセスにより得られる変換機能には限界があり,新規な機能変換創出のためには原子・分子レベルでの精緻な構造設計およびプロセス制御が必要となります.
 酸化物セラミックス薄膜の分野では,半導体工学をベースに,薄膜における原子層積層制御,クラスター変調分布制御,ナノ構造傾斜制御などに人工超格子薄膜ナノプロセスを適用することにより,変換機能の複合化を達成するとともに自発的機能変換特性の創出を試み,無機的機能変換を越えた有機的機能変換特性を備えた次世代の人工材料創製のための探索的研究が行われています.
 セラミックス薄膜は極限状態の一形態として単結晶や燒結体のようなバルクでは実現できない優れた機能も示します.強誘電体薄膜は DRAM,キャパシタ,不揮発性メモリー(FRAM),マイクロピエゾアクチュエータ,弾性表面波, 光変調器,光導波路,光偏向素子やパイロセンサ等への応用研究が進められています.また,磁性体薄膜や光機能性薄膜においてもメモリー材料をはじめ巨大磁気抵抗素子,発光材料,非線形光学材料などを組み合わせた次世代機能素子の提案や開発が行われております.
 本書は,酸化物薄膜の原子・分子レベルでの制御技術とデバイスについて「マテリアルインテグレーション」誌に掲載された記事を系統的に一冊にまとめたものです.

Contents

第1章 セラミックス薄膜の合成法
   第1節 パルスレーザMBE法による量子構造セラミックス薄膜の形成
            1.はじめに
            2.量子構造セラミックス
            3.パルスレーザMBE法と原子レベル制御
            4.基板の平坦化と2次元エピタキシー
            5.表面・界面のキャラクタリゼーション
            6.今後の展望


   第2節 レーザーアブレーションを利用したフロンティアセラミックスの創製
            1.背景
            2.目的
            3.実験
            4.結果及び考察
            5.まとめ


   第3節 イオン工学技術の手法を用いた有機・無機へテロ接合型
        光センサー創製
            1.はじめに
            2.銅フタロシアニン・酸化チタン超格子素子の光センシング機能
            3.結論


   第4節 ゾルーゲル法によるセラミック薄膜の作成と評価
            1.はじめに
            2.ゾルーゲル法の基礎科学
            3.コーティング
            4.基板とコーティング膜の接着
            5.機能性コーティング膜
            6.まとめ


   第5節 ゾルーゲル法による機能性薄膜の現状と動向
            1.はじめに
            2.機能性薄膜の作成プロセス
            3.ゾルーゲル法による機能性薄膜
            4.無機・有機複合ゲル膜を用いた薄膜の加工
            5.おわりに


   第6節 LB法によるチタン酸鉛薄膜の合成とその物性
            1.はじめに
            2.ラングミュア・ブロジェット(LB)法とは
            3.LB法を用いたチタン酸鉛の合成
            4.LB法を用いて作製したチタン酸鉛薄膜の物性
            5.まとめ


   第7節 電気泳動法によるセラミックス複合膜の製造プロセス
            1.はじめに
            2.電気泳動プロセスの原理
            3.電気泳動による複合化
            4.セラミックスへの適用例
            5.おわりに


   第8節 ソフト溶液プロセスによる高機能セラミックスの開発
        -その特色と意義-
            1.はじめに
            2.ソフト溶液プロセス
            3.ソフト溶液プロセスの例
            4.おわりに


   第9節 ソフト溶液プロセス
        -電気化学的手法を用いるソフト溶液プロセスについて-
            1.はじめに
            2.電気化学反応を用いる複合酸化物膜作成の基本的原理
            3.電解酸化による複合酸化物膜作成
            4.電解還元を用いる場合
            5.無電解酸化によるマンガンペロブスカイト膜作製
            6.その他の電解を用いた酸化膜作製方法
            7.おわりに



第2章 強誘電体薄膜の合成
   第1節 強誘電体薄膜の合成とデバイス開発の現状
            1.はじめに
            2.酸素八面体強誘電体の結晶構造と強誘電的相転移現象
            3.強誘電体薄膜の合成法
            4.デバイス開発の現状
            5.むすび


   第2節 MOCVD法による強誘電体PZT薄膜の合成とその物性
            1.はじめに
            2.MOCVD法
            3.MOCVD装置
            4.PZT薄膜の合成
            5.原料純度がPZT薄膜の電気特性に及ぼす影響
            6.PZT薄膜のサイズ効果
            7.結び


   第3節 ECRスパッタ法による強誘電体薄膜(BIT,BNN)の合成とその物性
            1.はじめに
            2.ECRプラズマスパッタ
            3.BITおよびBNN薄膜の合成と評価
            4.まとめ


   第4節 YAGレーザアブレーション法による強誘電体薄膜の
        作製と焦電特性
            1.はじめに
            2.レーザアブレーション法による酸化物薄膜の作製
            3.多層構造膜の電気的特性と界面依存性
            4.強誘電体多層構造の素子特性:分極疲労特性
            5.強誘電体多層構造の素子特性:焦電特性
            6.まとめ


   第5節 電子線誘起反応を用いた強誘電体薄膜の微細加工プロセス
            1.はじめに
            2.電子線誘起反応微細加工プロセスの概要
            3.電子線描画システム
            4.電子線誘起反応
            5.微細強誘電体BITパターンの結晶化の様相
            6.強誘電体SBTパターンの電気的特性


   第6節 ビスマス層状構造強誘電体薄膜の合成と物性
            1.はじめに
            2.ビスマス層状構造強誘電体
            3.チタン酸ビスマス(Bi
4Ti3O12:BIT)薄膜
            4.タンタル酸ストロンチウムビスマス(SrBi
2Ta2O9:SBT)薄膜の作製
            5.終わりに


   第7節 電気泳動法によるBaTiO3/SrTiO3および
        PbZrO3/PbTiO3コンポジット膜の作製
            1.はじめに
            2.BaTiO
3/SrTiO3複合膜の調整
            3.PbZrO
3/PbTiO3複合膜
            4.終わりに


   第8節 化学溶液法によるタングステンブロンズ型強誘電体薄膜の合成
            1.はじめに
            2.化学溶液法による合成プロセス
            3.ニオブ酸塩タングステンブロンズ強誘電体膜の合成例
            4.まとめ


   第9節 エアロゾル式ジェット・プリンティング法による強誘電体膜の
        形成とその電気特性
            1.はじめに
            2.エアロゾル式JPS
            3.強誘電体膜の形成とその電気特性
            4.PZT堆積膜とポリ尿素薄膜の積層
            5.今後の展望



第3章 メモリー関連材料
   第1節 磁気ディスク技術の展望
            1.はじめに
            2.磁気ディスク装置の動向
            3.磁気ディスクの技術のトレンド
            4.磁気ディスクシステム
            5.むすび


   第2節 DRAM用高誘電率薄膜
            1.はじめに
            2.高誘電率材料の必要性
            3.PVD法によるBST薄膜とPt系下部電極
            4.CVD法によるBST薄膜とRuO
2・Ru系下部電極
            5.Pb系薄膜
            6.まとめと今後の課題


   第3節 強誘電体不揮発性メモリーの現状と応用
            1.はじめに
            2.FeRAMの動作原理と特長
            3.Bi系層状超格子
            4.集積化技術
            5.FeRAMの特性
            6.FeRAMの応用
            7.まとめ


   第4節 不揮発性メモリー用強誘電体薄膜の分極特性に及ぼす
        空間電荷の影響
            1.はじめに
            2.強誘電体薄膜キャパシタの作製
            3.結果と考察
            4.結び


   第5節 光メモリー用材料 -光磁気材料を中心として-
            1.はじめに
            2.光磁気材料
            3.相変化及び色素材料
            4.まとめと今後の動向


   第6節 光磁気記録の高密度化技術
            1.光磁気記録の動向
            2.光磁気記録の高密度化技術
            3.光磁気多値記録の基本原理
            4.磁界変調4値記録実験
            5.記録レベル間の独立遷移
            6.微小磁区記録実験
            7.まとめ


   第7節 ホールバーニング・ホログラフィーによる動画記録
            1.はじめに
            2.ホールバーニングメモリー
            3.Eu3+:Y
2SiO5のホールバーニング
            4.動画記録の原理
            5.実験
            6.今後の展望



第4章 透明導電膜
   第1節 新規な透明導電膜
            1.はじめに
            2.透明導電膜材料開発の現状
            3.成膜方法
            4.多元系金属酸化物透明導電膜の特性
            5.おわりに


   第2節 ITOのスパッタリング成膜の現状と課題
            1.はじめに
            2.LCD用ITO膜への要求特性
            3.量産装置とITO成膜の現状
            4.今後の課題
            5.まとめ


   第3節 ITO透明導電膜はここまでわかってきた
            1.はじめに
            2.低比抵抗ITOの真空成膜方法
            3.ITO薄膜のエッチングとパターニング
            4.おわり


   第4節 ITOの塗布成膜はここまでできる
            1.はじめに
            2.ITOの成膜方法
            3.ITOの塗布成膜
            4.今度の課題


   第5節 透明導電膜としての酸化亜鉛
            1.はじめに
            2.ZnOの結晶構造及びキャリア生成機構
            3.透明導電性ZnO系の成膜
            4.スパッタGZO薄膜の作製
            5.まとめ



第5章 ELデバイス
   第1節 無機薄膜エレクトロルミネッセントディスプレイ
            1.はじめに
            2.基本的なEL構造と発光機構
            3.最近の研究・開発の動き
            4.おわりに


   第2節 蛍光体とELデバイスへの応用
            1.まえがき
            2.蛍光体
            3.ELデバイスへの応用
            4.あとがき



第6章 薄膜コンデンサ
   第1節 光照射を利用したゾルーゲル法による機能性セラミック薄膜
        形成プロセスの開発 -五酸化タンタル薄膜の形成-
            1.はじめに
            2.Ta
2O5薄膜の形成プロセス
            3.Ta
2O5薄膜の断面構造と微構造
            4.Ta
2O5薄膜の分子構造(赤外吸収スペクトル)
            5.Ta
2O5薄膜の性質
            6.Ta
2O5薄膜のパターニング
            7.おわりに


   第2節 MOCVD法による(Ba,Sr)TiO3薄膜積層コンデンサの試作及び評価
            1.はじめに
            2.成膜及び評価方法
            3.結果及び考察
            4.まとめ



第7章 センサ
   第1節 In2O3薄膜型ガスセンサを用いた溶水オゾン計
            1.はじめに
            2.In
2O3薄膜型オゾンセンサ
            3.溶水オゾン計
            4.フィールドテスト
            5.まとめ


   第2節 分子鋳型法-有機無機複合膜の作製とCO2センサへの応用
            1.はじめに
            2.有機-無機複合体を利用した無機化合物の合成
            3.分子膜を用いた超微粒子合成
            4.キャスト法を用いた無機超薄膜の合成
            5.キャスト法によるCuO超薄膜の作成とCO
2センサ特性
            6.おわりに



第8章 フロンティアセラミックス
   第1節 薄膜法を用いたフロンティアセラミックスの合成
            1.フロンティアセラミックスと薄膜
            2.薄膜の粒と粒界
            3.チタン酸バリウム薄膜
            4.酸化亜鉛薄膜
            5.まとめ


   第2節 レーザーアブレーションを利用したフロンティアセラミックス
            1.背景
            2.目的
            3.実験
            4.結果及び考察
            5.まとめ



第9章 磁性体薄膜
   第1節 Fe16N2単結晶薄膜の磁性
            1.緒言
            2.実験結果
            3.計算結果
            4.今後の課題とまとめ


   第2節 巨大磁気抵抗効果
            1.はじめに
            2.ペロブスカイトMn酸化物でのCMR効果
            3.パイロクロア型酸化物Tl
2Mn2O7でのCMR効果
            4.新しい素子としての可能性
            5.おわりに



第10章 その他
   第1節 酸化亜鉛薄膜を用いた高周波弾性表面波フィルタ
            1.はじめに
            2弾性表面波フィルタの構成
            3.ZnO薄膜の特長
            4.ZnOのエピタキシャル成長
            5.ZnOエピタキシャル膜の諸特性
            6.ZnOエピタキシャル膜を用いたSAWフィルタの作製
            7.2.4GHz衛星移動体通信用SAWフィルタの特性
            8.おわりに


   第2節 薄膜焦電材料の開発とその応用
            1.まえがき
            2.薄膜焦電材料
            3.薄膜焦電型赤外線センサ
            4.あとがき


   第3節 層状構造(ZnO)mIn2O3の熱電特性
            1.はじめに
            2.ホモロガス化合物(ZnO)mIn
2O3(m:自然数)の構造
            3.セラミックス(多結晶)の熱電特性
            4.元素置換効果
            5.スパッタ膜による異方性の評価