セラミックスの高速燒結技術セラミックス電磁プロセッシング B5版 300頁 ¥17,000(税別)(1998.10.初版) ■刊行主旨■ バルク状のセラミックス成形体については、その作成ならびに部品化のいずれにおいても、現在、電気炉による放射熱を利用して加熱・焼結が主流です。放射熱そのものも一種の電磁波ですが、その波長は赤外領域が中心であり、セラミックスはこの放射熱により表面から加熱され、熱伝導により内部までゆっくり温度が上がっていくので加熱速度や最高到達温度を大きくするのは容易でありません。 これに対して、セラミックスを内部から直接加熱したり、もっと速い速度で従来より高い温度まで容易に加熱する方法として、マイクロ波帯やミリ波帯の電磁波の照射、パルス大電流の印加あるいはプラズマの導入等の、新しい方法が最近活発に行われるようになってきています。 マイクロ波・ミリ波、パルス大電流通電および熱プラズマを利用したセラミックス高速焼結は、いずれも材料を高温にした状態での熱プロセスであるにもかかわらず、電気炉での焼結より高速で粒成長の抑制を伴った焼成が行われ、省エネルギーで,割れにくくかつ新しい機能を持ったセラミックスを実用レベルで作成可能なプロセスとして、新産業育成に大いに貢献することが期待されています。 Contents 《総論 セラミックス電磁プロセッシングの動向》 大阪大学 接合研究所 三宅 正司氏 マイクロ波・ミリ波プロセスとパルス大電流通電プロセスを中心にしつつ、プラズマを利用した研究も含めて、セラミックス電磁プロセシングという名の高速プロセスについて、その特徴、長所と共に今後の問題点を述べる。 1.はじめに 2.マイクロ波・ミリ波プロセスの特徴と今後の展開 3.パルス大電流通電プロセスの特徴と今後の動向 4.その他の高速プロセス 5.おわりに 《第1部 ミリ波・マイクロ波による焼結》 ■第1章 焼結機構■ 第1節 マイクロ波焼結機構とミリ波による焼結 富士電波工業(株)佐治 他三郎氏 大電力ミリ波を用いて加熱することにより、欠陥のない焼結体を安定して得ることができるようになった。またミリ波による加熱で、マイクロ波焼結の特長を強化することができた。 1.はじめに 2.マイクロ波による加熱と焼結の機構 2.1 拡散促進 2.2 粘性低下説 2.3 選択加熱説 2.4 疎密効果説 2.5 内部加熱説 2.6 測温誤差説 2.7 表面活性化説 3.ミリ波による焼結の現状 4.ミリ波によるセラミックス焼結の特徴 4.1 電界分布が均一になりやすい 4.2 誘電損失の温度依存性が小さい 4.3 誘電損失が大きく加熱効率が高い 4.4 非熱的作用が大きい 4.5 準光学的挙動を示す 5.新型ジャイラトロン焼結炉による省エネルギー焼結 6.ミリ波による大型品の焼結技術 7.おわりに 第2節 ミリ波によるセラミックス加熱・焼結 大阪大学 接合研究所 節原 裕一氏 ここでは、特にミリ波帯の電磁波を利用したセラミックスの加熱・焼結プロセスの特徴と今後の展望について、我々の研究結果を交えながら紹介する。 1.はじめに 2.電磁波によるセラミックス加熱の特徴 3.収束型高エネルギー密度ミリ波ビームの発生とセラミックス加熱・焼結への応用 4.マルチモード型アプリケータを用いたセラミック材料のミリ波焼結 5.おわりに 第3節 マイクロ波による焼結 (財)ファインセラミックスセンター 角岡 勉氏 マイクロ波加熱の原理、特徴を述べ最近の主な具体例を紹介する。 1.はじめに 2.マイクロ波加熱の原理 3.マイクロ波焼結の特徴 ・急速焼結 ・”内から外へ”の焼結 ・選択加熱 ・マイクロ波の非熱効果 ・アルミナ及びその複合材料系 ・ZnOバリスタ ・超伝導セラミックス 4.おわりに 第4節 マイクロ波加熱と焼結〜課題と展望 神奈川工科大学 伊熊 泰郎氏 マイクロ波加熱の特徴を述べ、それを最大限に利用するために必要なことを中心にマイクロ波加熱の問題点とその展望について述べる。 1.はじめに 2.マイクロ波加熱の特徴 3.マイクロ波加熱の状況 4.効果的なマイクロ波加熱 5.急速加熱と局部加熱に対する課題と展望 6.おわりに 第5節 マイクロ波焼結による緻密化のプロセス 富士電波工業(株)佐治 他三郎氏ほか 本論文では、構造セラミックスのマイクロ波焼結にはどのような成形体が適切で、どのような焼結パターンが適切であるかを探索する。 1.要約 2.はじめに 3.実験 4.実験結果と考察 4.1 Si3N4の焼結 4.2 Al2O3の焼結 4.3 固相焼結の緻密化機構 ・マイクロ波焼結の収縮曲線 ・マイクロ波焼結の低温焼結に及ぼす要素 ・マイクロ波焼結の機構 ・緻密化速度の制御 5.まとめ 第6節 セラミックスのマイクロ波焼結の概念設計 核融合科学研究所 佐藤 元泰氏 実用的マイクロ波焼結炉の設計を念頭において説明する。 1.焼結炉に要求されるマイクロ波電力 2.マイクロ波炉の型式と周波数の選定 ・共鳴型 ・非共鳴型 ・焼結体の肉厚と周波数 ・昇温/断熱/制御 3.マイクロ波源 4.おわりに ■第2章 ミリ波・マイクロ波によるセラミックス焼成の実際■ 第1節 28GHzミリ波によるイットリア部分安定化ジルコニアの焼結 名古屋工業技術研究所 佐野 三郎氏 28GHzミリ波焼結装置を利用して、イットリア部分安定化ジルコニアの焼結を試み、試料内部での温度分布を調べた結果について紹介する。 1.はじめに 2.加熱中の試料内部の温度分布 3.28GHzミリ波によるイットリア部分安定化ジルコニアの焼結 4.おわりに 第2節 機能性セラミックスのマイクロ波焼結 (株)豊田中央研究所 福島 英沖氏 機能性セラミックスの焼結例として,ZnOバリスタ、アクチュエータ用PZTセラミックス及びコンデンサ内蔵多層基板をマイクロ波焼結し、得られた焼結体の電気的、機械的特性及び微構造を調べ、従来の電気炉焼結体と比較した結果について報告する。 1.はじめに 2.マイクロ波加熱の原理、特徴 3.マイクロ波加熱制御装置 4.ZnOバリスタの焼結 5.PZTセラミックスの焼結 6.多層基板の同時焼成 7.おわりに 第3節 マイクロ波加熱による半導体セラミックスの合成 宇部興産(株)治田 慎輔氏ほか マイクロ波加熱例として機能性材料であるBaTiO3系PTCRセラミックスを取り上げ,材料開発の「壁」を打破するための手段としてマイクロ波加熱プロセスを利用した一例を紹介する。 1.はじめに 2.マイクロ波加熱の原理と装置の概略 3.Nb添加BaTiO3セラミックスのマイクロ波加熱 3.1 微構造と室温抵抗率 3.2 抵抗率−温度特性 3.3 粒成長機構に関する一考察 4.まとめ 第4節 セラミックスのマイクロ波接合 (株)豊田中央研究所 松居 正夫氏 試作したマイクロ波加熱装置、およびそれを用いてセラミックス同士の突合せ接合を試みた結果を紹介する。 1.はじめに 2.マイクロ波加熱の原理と接合の現状 3.マイクロ波加熱装置 4.アルミナ接合 5.窒化ケイ素の接合 6.おわりに 第5節 新しい炭化物電極材料の高周波プラズマ焼結 大阪大学接合科学研究所 牛尾 誠夫氏ほか 高周波プラズマを利用して、これらの炭化物の焼結を試み、さらに得られた焼結体について、Cl2およびO2を含む雰囲気中でのプラズマ放電用電極としての性能を調べようとした。 1.緒言 2.実験方法 3.実験結果及び考察 3.1 炭化タンタルTaCのプラズマ焼結 3.2 炭化ハフニウムHfCの焼結 4.結言 《第2部 パルス大電流通電プロセスによる焼結》 ■第1章 パルス大電流通電プロセスの機構と特性■ 第1節 パルス大電流通電による焼結プロセスの特性 大阪大学接合科学研究所 巻野 勇喜雄氏 パルス大電流法を用いてアルミナ圧粉体を焼結したときの温度および電流特性をその場測定した結果について紹介し、パルス大電流法のプロセス特性を考察する。続いて、アルミナ焼結固化体の材料特性とプロセス条件との関連について述べる。 1.はじめに 2.アルミナ圧粉体の温度および電流のその場測定 3.材料特性から見た焼結プロセスと電流特性 4.さいごに 第2節 放電プラズマ焼結 東北大学 金属材料研究所 大森 守氏ほか 放電プラズマ法は、通常のホットプレスに比較して高性能の焼結体が得られることで、着実に普及している。しかしながら、プラズマに関する詳細はほとんど知られていない。実験結果に基づく類推を含めプラズマ発生とそのエネルギーおよびその効果について述べる。 1.はじめに 2.熱プラズマ焼結 2.1 プラズマの種類 2.2 焼結 3.放電プラズマ焼結 3.1 プラズマの種類 3.2 プラズマの効果 3.2.1 拡散促進 3.2.2 スパッタリング 3.2.3 急速昇温 4.おわりに 第3節 放電プラズマ焼結メカニズムとセラミックスへの応用 住友石炭鉱業(株)鴇田 正雄氏 放電プラズマ焼結技術(SPS法)の最近の技術動向についてセラミックスおよび傾斜機能材料分野への応用加工事例の一部を交え紹介する。 1.はじめに 2.SPS法の加工原理と特徴 2.1 SPS法の基本構成 2.2 パルス通電効果 2.3 粒間結合とその界面 2.4 焼結結合と表面処理技術 3.SPSプロセスの応用分野 3.1 セラミックス分野への応用 ・Si3N4+Al2O3系複合材料のSPS焼結体 ・高純度SiC炭化ケイ素の高密度焼結体 3.2 傾斜機能材料の合成 ・ZrO2/ステンレス鋼系傾斜接合焼結体の試作 ・ガラス/SUS304系6層傾斜材料の試作 4.おわりに 第4節 第三世代の放電プラズマ焼結(SPS)システムの開発 住友石炭鉱業(株)鴇田 正雄氏 新しい放電プラズマ焼結(SPS)システムの開発状況について最近の大型SPS装置の事例とセラミックス分野への応用加工事例の一部を交え紹介する。 1.はじめに 2.SPSプロセスの特徴とセラミックス分野への応用 2.1 セラミックス分野への応用 2.2 SPSプロセスの基本構成 2.3 SPSプロセスの加工原理 2.4 SPSプロセスの一般的特徴 3.住石放電プラズマ焼結システム 3.1 開発の背景とシステムの拡張性 3.2 DR.SINTERシリーズ 3.3 住石SPSシステムの特長 3.3.1 焼結機本体 3.3.2 特殊DCパルス焼結電源/操作制御盤 3.3.3 安全対策 4.ファインセラミックスのSPS焼結例 4.1 Si3N4窒化ケイ素の高密度焼結体 4.2 高純度SiC炭化ケイ素の高密度焼結体 4.3 Al2O3アルミナ系複合材料の高密度焼結 4.4 ZrO2ジルコニア/ニッケル系傾斜機能材料の試作焼結体 5.おわりに ■第2章 パルス大電流通電プロセスの材料合成の実際■ 第1節 放電プラズマ焼結法によるセラミックス、合金系材料の合成と物性 早稲田大学 一ノ瀬 昇氏 ここではSPS法で微細構造を制御したセラミックス、合金系焼結体の合成と物性につき我々のところで最近行ったいくつかの事例について報告する。 1.はじめに 2.積層ソフトフェライトの合成と磁気的特性 3.Nd-Fe-B系化合物の合成と磁気的特性 4.傾斜構造を有するFeSix系化合物の合成と熱電特性 5.アルミナ−チタン傾斜層を用いたアルミナ−チタン合金の接合 6.おわりに 第2節 放電プラズマ焼結によるウイスカー強化ジルコニアの作成 大阪工業技術研究所 玉利 信幸氏 アルミナウイスカー/ジルコニア系複合セラミックスの作成に放電プラズマ燒結を利用し、緻密化や機械的性質におよぼす放電プラズマ焼結の影響を同一の焼結条件で作製したホットプレス体と比較した結果について紹介する。 1.はじめに 2.作成および評価法 3.緻密化と機械的性質 4.微細組織 5.おわりに 第3節 放電プラズマ焼結法による複合体の作成 東北工業技術研究所 鷲見 新一氏ほか 開発され注目されている放電プラズマ焼結法に関連する当所の研究における固体接合、粉体焼結、複合材の作製例について紹介する。 1.はじめに 2.放電プラズマ焼結法による複合体の作製について 3.固体接合について 4.紛体の焼結について 5.メカニカルアロイング粉末の焼結について 6.まとめに 第4節 プラズマ焼結を利用するSiC-Si複合成形体の製造 北海道工業技術研究所 奥谷 猛氏ほか 従来法と比べ簡便な方法であるプラズマ焼結と機械的な加工を組み合わせた方法によるSiC-Si複合体ハニカムの製造について紹介する。 1.はじめに 2.高温燃焼触媒構造支持体としてのSiC-Si複合体 3.プラズマ焼結によるSiC-Si複合体の製造 4.おわりに 第5節 放電プラズマ焼結法による傾斜機能材料の作製 東北大学 金材研 大森 守氏ほか 多用な応用が期待される傾斜機能材料の開発はその作製法の開発にかかているといえる。本稿では放電プラズマ焼結法による傾斜機能材料の作製についてのべる。 1.はじめに 2.傾斜機能材料の作製 3.セラミックス−金属系傾斜機能材料 3.1 ZrO2(X・Y2O3)-TiAl系傾斜機能材料 3.2 ZrO2(3Y2O3)−ステンレス鋼系傾斜機能材料 3.3 ZrO2(3Y2O3)−Ni系傾斜機能材料 4.高分子−金属系傾斜機能材料 5.おわりに 第6節 放電プラズマ焼結(SPS)法による多孔室セラミックスの作製 長岡技術科学大学 石崎 幸三氏ほか 多孔質セラミックスを作製する上でのSPS法の特徴について述べる。 1.はじめに 2.SPS法による多孔質セラミックスの作製 3.多孔質セラミックスを作製する上でのSPS法の特徴 4.最後に 第7節 放電プラズマ焼結法の大型製品への応用 宮城県工業技術センター 斎藤 雅弘氏ほか 放電プラズマ焼結法を用いた焼結品作製結果について、従来の焼結法との比較を行いながら、製品の大型化への可能性についてのべる。 1.はじめに 2.放電プラズマ焼結法によるAl2O3セラミックスの作製 2.1 Al2O3セラミックスの作製条件 2.2 小型パンチ(SP/MSP)試験法によるAl2O3燒結体の破壊特性評価 2.3 焼結法の相違によるAl2O3燒結体の微細組織変化 2.4 焼結体中におけるカーボンの拡散 2.5 SPS法による大型Al2O3燒結体の試作 3.おわりに |