マテリアル インテグレーション 2007年6月号
Low Temperature Cofired Ceramics ; LTCC」


特集によせて
防衛大学校 通信工学科 山本 孝

「Low Temperature Cofired Ceramics ; LTCC」の特集を組むことにあたって,LTCCの開発背景を述べてみたい.通話だけで始まった携帯電話は,今やパソコン,テレビまで搭載し始め高性能化は留まるところを知らない.テレビはブラウン管から液晶,プラズマへと発展し,パソコンを取り込むか,パソコンがテレビに変身しようとしている.このような製品の根幹を成すハードウエア技術の主役は半導体技術である.接合型トランジスタの誕生 (1949年) から,わずかに55年でMOSIC (1964年) 〜 LSI (1969年) 〜 VLSI (1978年) 〜ULSI (1989年) と発展してきた.

LTCCの歴史は,ICチップや抵抗,容量素子を搭載あるいは,その上にこれらの素子を結ぶ回路を形成したアルミナセラミックス基板に始まる.コンピュータに多用される多層回路は,耐熱性,機械的強度,絶縁性は有機材料に比べると優れているが,高い誘電率が原因の信号の遅延,高い焼成温度のために銅のような低融点金属を同時焼成できずタングステンなどの高融点金属を導体として使用することにより回路の導体抵抗の増大,微細なパターンが施せないことなどにより,大型コンピューターの高速化に障害となった.ホウケイ酸ガラスとアルミナを組み合わせた結晶化ガラスは,1000℃以下で焼成可能であり,Auを配線導体とした多層化が可能であった,LTCCの始まりである (1982年) .コンピュータの高速化を目的とする低温焼結,低誘電率化,導体の低抵抗化を目的とした,1000℃以下で焼成可能なガラスセラミックスの開発が進められた.

このようなことを技術背景として,西垣等は多層配線用にAg導体 (融点=960℃) ,ガラスセラミックス複合体を使用して,拘束焼成(無収縮,Z焼成とも呼ばれる)を行い,自動車用多層LTCCの大型化を実現した (1995年) .LTCCは半導体と同じ歴史をたどり,導体配線,抵抗,容量を内部に取り込み,益々高集積化していくであろう.