マテリアル インテグレーション 2005年9月号
特集 世界の熱電変換材料


特集にあたって
名古屋大学大学院工学研究科 教授 河本 邦仁

熱電変換材料の科学技術は,20世紀終盤から21世紀初頭にかけて大きく転換してきました.1950年代から君臨してきたビスマステルルに替わる新しい材料系が次々に発見,提案され,ペルチエ熱電冷却の新しい応用や熱電発電への大きな展開もようやく視野に入ってきました.この科学技術のうねりは,アメリカ,ヨーロッパ,アジアを中心にますます高まっており,近々世界が注目するであろう大きなブレークスルーの前夜的様相を呈してきています.

一方,行き詰まりつつある環境・エネルギー問題の有効な解決策として,分散している未利用熱エネルギーを電気エネルギーに変換する技術へのニーズは大変高く,世界各国の中心的開発課題として取り組みが行われている現状です.

このような背景を踏まえ,本特集号では,熱電変換材料工学における世界第一線級の科学者が取り組む先端研究を紹介していただき,熱電材料と応用に関する世界の研究動向と将来の可能性を探ることにしました.

今回は「その1」として,日本から3報,中国から2報,フランスから2報,アメリカから1報の報告をいただきました.この特集が関係各位の参考となれば望外の喜びです.なお.誌面の制限や著者の都合から紹介しきれなかった方々も多いこと,また,展開が急であることから今後も続けて本誌の特集として世界の動きを追っていく予定でいることを付記します.