マテリアル インテグレーション 2002年11月号
特集 E-Ganglion/電子神経節


巻頭言
松下電器産業(株) 中尾研究所 技監 釘宮公一

 地球誕生以来,46 億年の暦年を生き延び発展してきた動物の体は上手く出来ている.中でもGanglion/神経節は積年の試練を経た素晴らしい機能性生体器官である.手足(アクチュエーター)や目鼻(センサー)などが効率良く機能しているが,ガングリオンはこれらを中継,制御しており,体の随所にある.知覚情報や運動指令などを伝達する神経が集中する連結部となっている.高等動物になるにつれて,脳や脊椎に発達分化し,要所要所に残った重要な中継点にあるガングリオンと協調して全体を制御している.個々の分散処理と集中処理を整然と実施し体を支えている究極の機能性デバイスと云える.昨今,バイオミミックと生体模倣を積極的に謳っているデバイスは多い.しかし,現在の高度な電子機器やシステムは自ずと生体の構成に近づいているのが現実であろう.高度な自己修復機能,修正機能を有した工作機械,大型構造物や人型ロボットが発達する程,その五感や運動機能を制御する信号制御,パワー制御系は高度化複雑化して生体と同様の発達に倣った分散制御デバイスとしてのE-Ganglion に定着すると期待される.ハードとソフトの融合した機能デバイスとして,重要な技術分野や市場を形成しよう.
 さて,次世代実装基板の開発が世界中で競われている.軽薄短小の先端的な携帯機器を担う高機能デバイスとして期待が大きい.SOP やSOC を目指し,超LSI を取り込む電子の住む世界のナノと現世のミリを繋ぐ技術開発である.素材,工法,構造,構成など多岐に亘った開発で多くの技術分野の協力や集積が必要である.その為に国の支援を下に産官学の広範な連携がなされており,主要な欧米亜の諸国では国家プロジェクトや大型タスクとして,この6 ,7 年来競われている.技術開発は企業の枠を越えて,国際レベルの技術開発,技術競争となっている.例えば,米国の実装タスクには,欧州亜企業はもとより多くの日本企業が参画している.
 実装基板からさらに高度化した革新的なE-Ganglion デバイスの開発には,更に一段と高い踏み込んだ技術開発協力や多様な集積が必要である.異分野,異業種の技術の総力を揚げた先行開発が必要な時期に掛かっている.特に,社会基盤を支えるシステム機器,ロボット等の等身大機器,マイクロ工場などの机上システム機器の発展に伴って,各部署を分散制御するE-Ganglion デバイスが必須とされる.信頼性や耐環境性も一段と厳しいものが求められる.ハードルの非常に高い開発となる.日本企業の実力が活き,リードすべき技術であり,チャンスである.本編には,E-Ganglion 開発に繋がる材料,工法,構成面について各界,各分野の方々の寄稿を収録した.