マテリアル インテグレーション 2000年11月号
特集 新しいナノプロセッシングとナノマテリアルの創生


“特集号のねらい”


 米国の世界戦略とも関連して,最近,世界中でソフト産業が急速な活力を得つつあります.極東の或国を例にしますと,過去1年間で8,000件以上のベンチャービジネス会社が創立されていますが,その80%はソフト産業関係で有るとの情報もあります.この様な傾向とも関連して,日本の戦後の偉大な発展を支えてきたハード産業が,日本のみでなく世界中で活力を失いつつあり,特にハード産業の進展を支える筈の新しい構造・機能を持った材料開発に関する意欲は極端に失われつつあります.

 しかし一方では,20世紀の高度に発展した工業社会がもたらした,我々人類が緊急に解決すべき諸問題,「地球環境問題,エネルギー問題,人口増加問題,食料問題(水問題を含む)等」,を解決するために,新しい構造・機能を持つ材料の開発が不可欠で有るとの認識も高まりつつあります.

 このような新材料開発の必要性に関する異なる見方/期待を同時に突破する為には,言うまでもなく,材料設計・開発に関する新しいコンセプトが必要なことは言うまでもありません.即ち,21世紀に飛躍的に進展すると考えられるIT産業/バイオ・医療産業を支えるとともに,同時に,我々人類が緊急に解決すべき環境/エネルギー/食料/人口問題の解決にも繋がる,新しい材料開発コンセプトの構築が必要不可欠であると認識されます.

 この様な要求に応えることの出来る材料系の1つとして,私たちは,インターマテリアルをイメージしています.新しい概念に基づく,このインターマテリアルの基本的な考え方は,Material Integration 誌の1999年1月号,5月号,8月号,11月号と2000年1月号,5月号に紹介済みでありますので,詳細は其方を参考にして頂きたいが,簡単に述べるとインターマテリアルとは,金属,無機,有機,半導体材料を同一種材料或いは異種材料間で複合化・融合化し,材料機能を従来の単機能型から複合機能型へと変革した材料(即ち多機能調和型材料)を意味しています.この様な多機能調和材料を実現するためには,相手材料の弱点を飛躍的に改善しながら一方ではその優れた機能を更に向上させことを可能にするミクロからナノレベルでの特異な複合構造を実現する方向と,ナノ・分子・原子レベルで2種以上の材料を融合化することによる従来とは全く異なる新機機能材料のイノベーションを指向する方向とが考えられます.前者は,開発した材料をシステム内に如何に組み込むかを考えながらの材料研究(Material Integration Research)であり,後者はシーズ指向の研究に分類できます.

 本特集号では,インターマテリアル開発の根幹となると共に,21世紀の科学技術および新産業育成の核となると思われる,原子・分子・ナノレベルの構造を効率よく制御する新しいプロセッシングに関する研究,並びにクラスターからナノレベルの構造を制御した新しい機能材料の創生に関する研究に焦点を当て,角界で活躍されている方々に執筆を依頼しました.なお,これらの革新的な新プロセスと新機能材料に関する解説記事は,"New Clever Engineered Nanoprocessing", "New Clever Functionalised Nanomaterials ","New Clever Sensing Nanomaterials","New Nanostructure Related Engineered Materials", に分類して収録しました.更に,本特集号では,本年8月に仙台で開催されたナノ構造材料に関する国際会議を"New Perspective of Nanomaterials in Nano 2000"と題し報告いただき今後の展望を試みました.

 読者諸兄の,忌憚の無い意見を賜れば幸いです.