マテリアル インテグレーション 1999年11月号
特集 InterMaterial [4] 特異構造・機能の設計と材料化技術


“特集号のねらい”

 情報工学,生物工学,材料工学,エネルギー工学,環境工学は,21世紀の科学技術を支える重要な工学分野と認識されている.この中で本誌が関係する「材料工学」分野では,「エネルギー工学」や「環境工学」との双方向的(Interactive)な研究が求められると共に,更に「情報工学」と「生物工学」の成果を取り込むことが強く求められると予想される.この様な要請に応える為には,今まで独立に研究されてきた金属・無機・有機・半導体材料の融合が必要なことは言うまでもない.

 21世紀の「材料工学」に求められると考えられる,上記の社会的な要請に応える為には,金属・無機・有機材料の壁を乗り越えることが不可欠であると考え,著者らは平成7年にインターマテリアルのコンセプトを提案した.このインターマテリアルには,従って多岐にわたるコンセプトが含まれているが,次の2つの分野に於いては既に大きな成果が得られつつある.

  1. 金属,無機,有機,半導体材料を同一種材料又は異種材料間で,ミクロ・ナノ・分子・原子レベルで複合化・融合化することにより,材料機能を従来の単機能型から複合機能型へと変革した新奇材料(多機能調和型材料).

  2. 金属,無機,有機,半導体材料を同一材料又は異種材料間で,主として分子・原子レベルで特異な構造を設計することにより,新奇で高性能の特異機能を付与した材料(特異構造機能材料).

 平成11年度の本誌の1月号,5月号,8月号では,インターマテリアルの重要な1分野である「多機能調和型材料」に注目し,機械的特性に優れたセラミックス或いは金属系材料にエネルギー機能・環境機能・生物機能・情報機能を融合させる事を目的にしたインターマテリアルをNew Interactive Clever Engineered Materials,Surface and Interphase Engineered Materials,Human Related Engineered Materialsの3分野に分類して特集した.平成11年度で企画するインターマテリアルの最後の特集号となる本誌では,この材料のもう1つの重要な分野である「特異構造機能材料」に焦点を当てることにした.取り上げる材料及び機能は,それぞれ無機・有機系材料とエネルギー機能・環境機能・生物機能であり,それらをNew Energy RelatedEngineered Materials, Environment Related engineered Materials, Human Related engineered Materialsに分類し,「固体電解質」関係,「酸素富化膜」関係,「人工光合成」関係,「人工血液」関係の順に収録した.この特集号が,読者の今後の材料研究の一助になると共に,21世紀の「材料工学」の発展に寄与できればと考える.

 この様な企画の意図を理解し,ご執筆いただいた著者に紙面を借りて感謝したい.また,インターマテリアルの今後の研究並びにMaterials Integration誌の今後の発展の為にも,読者の忌憚のない意見やコメントを期待したい.