マテリアル インテグレーション 1999年8月号
特集 InterMaterial [3]


“特集号のねらい”

 今まで全く異なる材料分野として展開され,その間に大きな壁が存在していると考えられてきた金属・無機(セラミックス)・有機材料の垣根を超えて,それらを必要に応じて原子,分子,ナノ,ミクロレベルで複合化・融合化した,従来にない新しい構造を持つ材料系をインターマテリアルと呼んでいる.このインターマテリアルでは,この様な高次構造制御により金属・無機(セラミックス)・有機材料の優れた特性のみをお互いの欠点を出すことなく組み合わせることが可能になるので,21世紀の新産業の核になる,材料工学と情報工学,材料工学と生物工学の一体化(融合化)も可能になると考えられる.それ故,この新しい材料は現在我々人類が直面している,エネルギー問題,地球環境問題,人口の超高齢化問題の解決に威力を発揮する多機能調和材料となるのみでなく,今後の新しい産業育成に不可欠な材料の創成をもたらすはずである.

 また,この様な新しい構造・機能を持つ材料を設計するためには,当然のこととして,今まで全く異なると考えられてきた材料の異なる機能を単一材料・システム内に如何に組み込むかを考えながらの材料研究(Material Integration Research)が必須になる.この様なコンセプトに従い,月刊誌“Materials Integration" に1月号と5月号にインターマテリアルを特集した.その際,インターマテリアルがカバーする重要な材料分野を分かりやすく分類する為に,“New Interactive Clever Engineered Materials", “Interface and Interphase Engineered Materials", “Human Related Engineered Materials"の3分野を設定した.本特集号でも,同じようなコンセプトでの分類を採用して特集号を組んだ.その中で,本特集号の特徴はMaterials Integration的な研究・開発に不可欠な視点,即ち今後の開発・応用展開に関して深い洞察が必要な事を考慮して,通商産業省ファインセラミックス室の戸井朗人室長にセラミックス材料の国レベルの研究・開発の現状と将来構想を解説した玉稿を頂いた点である.本特集号のもう1つの特徴は,21世紀の材料開発研究に際して忘れてはならない重要な要素である,“地球環境問題"と“人間中心"の精神を可能な限り取り込むことを意識的に試みたことである.

 この様な企画者の意図を理解し,御執筆いただいた著者にこの紙面を借りて感謝します.また,Materials Intermaterial誌の今後の発展の為にも,読者の忌憚のないご意見やコメントを期待します.