マテリアル インテグレーション 1999年4月号
特集 環境用センサ


“特集号のねらい”

 18世紀に始まった産業革命以来,開発・発展に向かって突き進み,科学技術の急速な発達が全ての問題を解決し豊かで幸福に満ちた人間の営みを実現するものと考えられてきた.20世紀が終わろうとしている現在に至って,地球環境問題に関連してして資源エネルギー問題,南北問題,食料問題といった歪みが噴出し,これまでの対症療法的な対策ではどうにもならないところまできており,根本的な解決即ち,産業・社会構造の変革が迫られている.

 今起こっている環境上の問題点の解析や環境モニタリング結果から,微妙なバランスで地球の生態系が成り立っており,環境破壊のメカニズムの解明とシミュレーション結果から一歩間違えれば取り返しの付かない事態を招くところまできていると専門家から警告されている.

 こういった状況のもと,地球環境の状態と変化を精査に測定するセンシング技術の重要性は高く,簡易で,長時間連続して計測できる環境センサの製作に必要な材料技術がキーポイントになっている.

 人工衛星からの大気成分や地球表面等のリモートセンシングは(1)地球全域の観測可能 (2)周期的な観測が可能(3)実時間で観測可能など優れた特徴をもつうえ,測定可能な成分や,事象も幅広いものがあり送られてくるデータは環境関係の研究者を中心に貴重なデータを提供している.今回の特集ではリモートセンシングに使われる赤外線撮像素子について開発の現状を解説取り上げているが薄膜及びマイクロマシン技術の応用によってデバイス化されている.

 一方,各事業場においても,環境との関わりは規制値に対して対策を取るといった消極的なものであったが,企業のISO14001環境マネジメントシステムの取り組みや,個人の環境問題への意識の高まりによって地球環境負荷を最小にするプロセスへの移行や生産システムのクローズド化は計測監視体制,計測制御技術に大きな影響を与えている.また,今後地域での流通消費活動をも含めたゼロエミッション社会への移行は,事業場や生活の場の近接が余儀なくされ事業場のみならず地域内の通信技術と環境計測制御技術に対する要求は極めて大きいと予想される.

 本特集では,この点に着目し極めて低濃度な環境汚染物質を連続モニターでき,制御に結びつくセンサについて特集した.

 このほかに,バイオ素子や触媒と複合したセンサなど新しいセンサが提案されているが,誌面の都合で次回に譲りたい.